【不動産の選び方】一棟収益アパート
資産を形成する方法として、一棟収益アパートは効果的なのでしょうか?節税対策として有効なのか。資産を形成できるのか。実際に販売していた物件を基にシミュレーションを交えて、解説します。
目次
例1.一棟収益アパート(木造)物件概要
ー物件概要ー
価格:3,420万円(建物:1,000万円 土地:2,420万円)
年間家賃収入:319.2万円
予定利回り:9.33%
構造:木造
築年数:31年
ー属性ー
年収:1,300万円 税率43%(所得税33%、住民税10%)
上記の物件を購入した場合に、不動産投資として資産が形成できるのか。節税対策として有効なのかを検証してみます。
※相続税対策ではなく、所得税対策についての節税です。
シミュレーション条件
シミュレーション条件は下記で試算します。
【購入時】 | |||
物件価格 | 3,420 | 万円 | |
購入時初期費用 | 273.26 | 万円※概算 | |
購入時経費 | 153.8 | 万円※1年目に経費計上、仲介手数料は経費計上 | |
家賃収入(年間) 1年毎に0.5%下落 | 287.28 | 万円(実勢値:9割にて設定) | |
支出合計(年間) | 49.576 | 万円(実勢値補正無し) | |
【融資条件】 | |||
総借入 | 3,420 | 万円 | 元利均等方式 |
金利 | 2% | ||
融資期間 | 20 | 年 | |
【売却時】 | |||
売却価格 | 3078 | 万円(1%減/年間にて設定) | |
売却時費用 売却価格の3% | 108.174 | 万円 | |
保有期間 | 10 | 年 | |
【減価償却費の計算】 | 仲手配分 | ||
建物価格 | 1,000 | 万円 + | 32.9282 |
土地価格 | 2,480 | 万円 + | 84.5301 |
法定耐用年数 | 22 | 年 | |
耐用年数 | 4 | 年 | |
減価償却費(年間) | 258.7325 | 万円 |
※購入時初期費用
→仲介手数料、ローン手数料、登記関係費用、固都税、収入印紙、不動産取得税を加味した金額(概ね7~8%程度)
※支出合計(年間)
→管理費、日常清掃費、その他費用、固都税(月割)、保険料(月割)を加味した金額(概ね15%程度)
※売却時費用
→仲介手数料(概ね3%程度)
シミュレーションは実際に購入して、運用、その後売却の流れで試算します。
シミュレーション結果 保有
経過年数1年の例です。実際には同様に2~10年間行います。
経過年数 | 1 |
総収入(理論値) | 319.2 |
総収入(実勢値)稼働率9割 | 287.28 |
支出(ランニング費用) | 49.576 |
実収入(収入-支出) | 237.704 |
ローン返済額(元利) | 207.6145 |
税引前CF | 30.0894 |
購入時経費 | 153.8 |
ローン利息 | 67.1162 |
ローン利息(土地) | 47.4915 |
ローン利息(建物) | 19.6246 |
減価償却費 | 259 |
課税所得 | -241.9447 |
課税所得(土地利息控除後) | -194.4531 |
納税額(43%で計算、所得税・住民税) | -83.6148 |
税引後CF | 113.7043 |
税引後CF累計 | 113.7043 |
経過年数1年目は購入時の経費を計上していますので、
課税所得(土地利息控除後)が約194万円の赤字になります。
年収1300万円の方での試算になりますので、194万円に対する税率(43%)分が節税できる金額になります。(この例では約83万円の節税)
税引後CFは約113万円となります。
経過年数2~4年は、同様に計算していくとグラフのように
税引前CFは25~28万円
課税所得(土地利息控除後)は約41~42万円の赤字
約17~18万円が節税できる金額になります。
税引後CFは44~46万円
経過年数5~10年は、減価償却費の計上が出来なくなりますので、
税引前CFは17~24万円
課税所得は約176~185万円の黒字
約51~62万円の納税が必要になります。
税引後CFは51~62万円の赤字
~押さえておきたいポイント~
・1年目は購入時の経費が使えますので大きな節税となります。
・2~4年目は減価償却費がまだ使えますので、節税が可能です。
・5~10年目は減価償却費の計上が出来なくなりますので、不動産所得では黒字になり節税ではなく納税が必要になります(デッドクロス)。また、税引後CFはマイナスの状態が続きます。
→減価償却が切れたタイミング、短期譲渡に切り替わるタイミングに売却というのが戦略のポイントです。
シミュレーション結果 売却
※売却価格は1%減/年にて設定
【売却シミュレーション結果】 | 5年後 | 10年後 | ||
売却価格 | 3249 | 万円 | 3078 | 万円 |
売却時費用 | 108.174 | 万円 | 108.174 | 万円 |
ローン残高 | 2,689 | 万円 | 1,880 | 万円 |
税引前CF | 452 | 万円 | 1,090 | 万円 |
万円 | 万円 | |||
取得費 | 3,539 | 万円 | 3,539 | 万円 |
減価償却費累計 | 1,035 | 万円 | 1,035 | 万円 |
減価償却後取得費 | 2,505 | 万円 | 2,505 | 万円 |
譲渡所得 | 636 | 万円 | 465 | 万円 |
譲渡所得税 | 127.2591 | 万円 | 93.0591 | 万円 |
税引後CF | 325 | 万円 | 996 | 万円 |
5年後の売却では、譲渡所得は636万円
譲渡所得にかかる譲渡所得税は127万円
税引後CFは325万円
10年後の売却では、譲渡所得は465万円
譲渡所得にかかる譲渡所得税は93万円
税引後CFは996万円
~押さえておきたいポイント~
・売却時は減価償却をしている分黒字が発生しますので、その黒字に対して譲渡所得税がかかります。
・長期譲渡になりますので、税率は20%で計算しています。
・売却価格は年間1%減で設定していますので、実際の売却価格との増減がある可能性があります。
シミュレーション結果 投資全体
不動産投資の運用と売却を含めた投資全体のシミュレーション結果
【投資全体のシミュレーション結果】 | 5年経過後売却 | 10年経過後売却 | ||||
不動産投資保有CF(累計) | 197.8096 | 万円 | -92.2086 | 万円 | ||
売却CF | 325 | 万円 | 996 | 万円 | ||
合計(累計) | 522.8043 | 万円 | 904.2721 | 万円 | ||
購入時費用(投下資金) | 273.26 | 万円 | 273.26 | 万円 | ||
運用益CF | 249.5443 | 万円 | 631.0121 | 万円 |
5年後の合計CFは522万円
10年後の合計CFは904万円
5年後の運用益CF(購入時費用を引いたCF)は249万円
10年後の運用益CFは631万円
という結果となりました。
※運用益CFが初期投資を加味した際に最終的に増えたお金です。
~押さえておきたいポイント~
・273万円の当初支出に対して、5年経過後は522万円、10年経過後は904万円の儲けになります。(5年間の運用では104万円/年、10年間の運用では90万円/年)
・所得税率は総合課税ですので、給与所得+不動産所得が課税の対象です。
不動産所得が赤字の場合は税率が43%→33%になる可能性がありますが、デッドクロス後(5年目以降)は不動産所得がプラスされますので、43%→50%になる可能性があります。
今回のケースでは不動産所得の黒字は180万円程ですので税率50%になる可能性は低いですが、もし税率33%の人(課税所得が800万円位の人)は税率が33%→43%になる可能性が高いです。そうなると5年後以降の税金の支払いが重く乗っかってきますので注意が必要です。
まとめ
今回のシミュレーションでは、5年経過後に売却のケース、10年経過後に売却のケースの両方とも不動産投資としての効果はみられています。
実際の不動産投資では、家賃収入100%を目指すこと、より高値で売却を目指しますので、シミュレーションよりも良い結果が出ることもありますが、反対に急な支出や入居率が下がったりと悪い結果となることもあります。
節税については、1年目~4年目は減価償却できていますので実際に節税を感じることが出来ますが、5年目以降は収入が増えた分納税の必要があります。
また、売却時には所得税を支払う必要もありますので、一概に節税が出来たと喜んではいけません。
あくまでも節税は目的でなく、「節税を上手く使って不動産投資でどれだけのお金を稼いだのか」を考える必要があります。