年末の賃貸経営、何から整理すればよいか迷っていませんか

年末が近づいてきました。来年の確定申告に向けて、今のうちに何をしておけばよいのでしょうか?

まだ時間はあります。2026年分の申告は、原則として2027年2月16日から3月15日までの間に行います。経費の考え方と書類の整理を、年内に確認しておくと後が楽になります。
この記事では、不動産所得の経費の考え方、修繕費と資本的支出の違い、書類の整理、年内に修繕するときの考え方を、国税庁の情報をもとに整理します(2026年11月時点)。一般的な説明にとどめます。個別の判断は税理士などにご相談ください。
不動産所得の経費は、どこまで認められる?
不動産所得は、家賃などの不動産収入から必要経費を引いて計算します。必要経費にできるのは、不動産収入を得るために直接必要な費用です。家事上の経費(私生活のための支出)と明確に区分できるものに限られます。
国税庁が挙げる主な必要経費
- 固定資産税
- 損害保険料(火災保険など)
- 減価償却費(建物など、時間とともに価値が減る資産の購入代金を、使える期間に分けて経費にする仕組み)
- 修繕費
借入金の利子も、必要経費に含めて計算します。ただし、土地等の取得に充てた借入の利子にあたる部分は、赤字になったときの損益通算(他の所得との差し引き)の対象外です。この点は、アパートローンの金利上昇と見直しの手順を整理した記事でも触れています。
不動産所得が赤字になったときは、他の黒字の所得から差し引ける場合があります。これが損益通算です。別荘など趣味や保養が目的の貸付けによる損失は、対象になりません。
経費にするかどうかの考え方
経費かどうかは、「収入を得るために直接必要か」「私的な支出と分けられるか」の2点が出発点です。迷う支出は、領収書を残して税理士などに確認しましょう。

建物を買った代金は、買った年にまとめて経費にできないのですか?

建物は、耐用年数に応じて複数年にわたり、減価償却で経費にします。土地は減価償却の対象外です。償却の方法は、建物の取得時期によって決まっています。
少額の資産には、取得価額に応じた特例も定められています。取得時期や用途で適用の可否が変わるため、国税庁のタックスアンサー(No.2100)や税理士でご確認ください。
青色申告と白色申告は軽く確認を
青色申告は、帳簿をつけて申告する制度です。事前に「青色申告承認申請書」を税務署へ出す必要があります。要件を満たすと、青色申告特別控除を受けられます。2026年分(令和8年分)の控除額は、国税庁の案内で65万円、55万円、10万円の3段階です(最大65万円)。
控除額は、貸付けが事業的規模かどうか(国税庁の目安では、アパート等はおおむね10室以上、独立家屋はおおむね5棟以上)、複式簿記による帳簿、期限内の申告、電子申告や電子帳簿保存の有無などで変わります。どちらを選ぶかは、状況によって異なります。税理士などに相談して決めましょう。
修繕費と資本的支出は、何が違うのか
修繕費は、その年の必要経費にできます。一方、資本的支出は、建物の価値を高めたり耐久性を延ばしたりする支出です。一度に経費にはならず、減価償却で複数年に分けて経費にします。
たとえば、避難階段の取付けのように、物理的に付け加えた部分は資本的支出です。用途変更のための模様替えなど、改造や改装に直接かかった金額も同様です。
国税庁は、名目ではなく、工事の実質で判定するとしています。「修繕」と呼んでいても、中身によっては資本的支出になります。

工事の金額が大きいと、どちらになるのか迷ってしまいます。

国税庁は、金額や周期の目安も示しています。ただし目安は一部の考え方で、修繕費として申告することが前提です。工事の中身も合わせて見ます。
国税庁が示す、修繕費として扱える目安
| 場面 | 国税庁の案内 |
|---|---|
| 避難階段の取付けなど、物理的に付け加えた部分 | 資本的支出となる |
| おおむね3年以内の周期で行う修理・改良など | 修繕費として申告すれば、必要経費にできる |
| 一つの修理・改良などの金額が20万円未満 | 修繕費として申告すれば、必要経費にできる |
| 資本的支出か修繕費か明らかでない金額が、60万円未満、またはその資産の前年末の取得価額(取得したときの金額で、前年末時点のもの)のおおむね10%相当額以下 | 修繕費として申告すれば、必要経費にできる |
| 明らかでない金額があり、上の金額の目安に当たらない場合 | 「資本的支出と修繕費の区分の特例」(所得税基本通達37-14。国税庁が示す法令解釈の指針)により区分することが認められている |
目安だけで決めないでください
上の目安に当てはまっても、実際の工事の内容によって扱いが変わることがあります。個別の工事の区分は、税理士などにご確認ください。
年内の修繕と書類の整理、どう進める?
年内に修繕する前に考えたいこと
修繕を年内にするか、年明けにするかは、入居者の状況、募集の時期、工事の内容などを見て決めます。税金のためだけに急ぐ必要はありません。
工事が資本的支出にあたると、支出した年に全額を経費にはできません。年内に急いで工事をしても、期待どおりの扱いにならないことがあります。まず工事の目的と内容を整理しましょう。
原状回復や設備の手入れは、入居募集の準備ともつながります。繁忙期前の空室対策で、原状回復や募集準備を整理した記事もご覧ください。どの年の経費になるかは、税理士にご確認ください。
領収書・通帳・帳簿の整理
年内に整えておきたい書類
- 領収書、請求書、見積書(修繕の内容が分かるもの)
- 家賃の入金と経費の支払いが分かる通帳
- 日付、取引先、金額を記録した帳簿
- 賃貸用と私用の支払いの区分
不動産所得のある方には、収入と経費の記録を残す義務があります。記録には、取引の日付、取引先の名前、金額などを書きます。
帳簿は、日々の記録を月ごとにまとめておくと、年明けの作業が軽くなります。会計ソフトや表計算ソフトなど、続けやすい方法で構いません。

なるほど。書類は、いつまで保存しておけばよいのでしょうか?

国税庁の案内(白色申告の場合)では、収入や経費を書いた帳簿は7年、請求書や領収書などの書類は5年です。青色申告の場合は、領収書や通帳なども原則7年となるなど、区分が異なります。紙のほか、一定の条件を満たせば電子データでも保存できます。

整理の順番が見えて、少し安心しました。最初の一歩は何でしょう?

まず、今年の領収書と通帳を月ごとにまとめてみましょう。大きな工事があれば、内容と金額を書き出して、税理士に確認しておくと安心です。
まとめ
この記事のまとめ
- 不動産所得の経費は、不動産収入を得るために直接必要で、家事上の経費と区分できるものです。
- 建物の購入代金は、耐用年数に応じて複数年にわたり、減価償却で経費にします。
- 修繕費と資本的支出は、名目ではなく工事の実質で区分されます。
- 20万円未満や、おおむね3年以内の周期などの目安は、国税庁が示しています。
- 領収書・通帳・帳簿は、年内に整理しておくと申告の準備が楽になります。
2026年分(令和8年分)の確定申告の期限は、2027年3月15日(月)です。税務署での相談・申告書の受付は2027年2月16日(火)からと、国税庁が案内しています(2026年11月時点)。実際の判断は、税務署・税理士などにご確認ください。アソシオでは、賃貸管理などのご相談に加え、税金が関わる内容は税理士などの専門家と連携して対応します。
※本記事の内容は、国税庁タックスアンサー(No.1370、No.1373、No.1379、No.1391、No.2020、No.2072、No.2080、No.2100。令和8年4月1日現在の法令等)、国税庁「暮らしの税情報(令和8年度版)」の「記帳や帳簿等保存・青色申告」「申告と納税」を参考にしています(2026年11月時点)。
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