実家を兄弟で相続したとき、共有名義にしても大丈夫?

親の実家を兄弟で相続することになりました。とりあえず共有名義にしておけば、揉めずに済みますか?

共有にすること自体はできます。ただ、売る・建て替えるときは全員の同意、貸すときも内容によって過半数や全員の同意が必要になります。
この記事では、次の4点を整理します。遺産の分け方、共有のままにしたときに全員の同意が必要になる場面、2023年4月に始まった遺産分割の10年のルール、相続登記の期限です。法務省・裁判所・e-Gov(法令検索)の情報をもとにしています(2026年11月時点)。一般的な説明のため、ご家族ごとの結論は書いていません。
遺産の分け方は主に4つ。実家はどう分ける?
相続人が複数いて遺言がない場合、実家などの遺産は、まず相続人全員の話し合い(遺産分割協議)で分け方を決めます。裁判所のハンドブックでは、分け方として4つの方法が紹介されています。そのうち、共有にしない3つが次の表です。
| 方法 | 中身(一言) | 実家の場合のイメージ |
|---|---|---|
| 現物分割 | 財産をそのままの形で分ける | 実家は兄、預貯金は弟、のように財産ごとに分ける |
| 換価分割 | 売ってお金に換え、代金を分ける | 実家を売却し、代金を分ける |
| 代償分割 | 1人が現物を取り、ほかの人にお金(代償金)を払う | 兄が実家を取り、弟に代償金を払う |
4つ目が「共有分割」(共有のまま持つ方法)です。代償分割は、現物を取りたい人がいないと使えません。代償金を払う資金も必要です。

なるほど。共有名義にするのは、分け方のひとつという位置づけなんですね。

はい。裁判所のハンドブックによると、共有分割は、あとで共有物分割(共有を解消する手続)を求められることがあります。そのため「抜本的な解決にならない場合がある」とされています。
ポイント
相続人が数人いると、遺産は法律上いったん相続人全員の共有になります(民法898条)。遺産分割は、その共有状態を、だれが何を持つかに整理する手続です。
共有のままにすると、全員の同意が要る場面
共有名義のまま使い続けるときは、何をするかで必要な同意が変わります。民法251条・252条の考え方を表にまとめます。
| 場面 | 必要な同意(一般的な整理) |
|---|---|
| 建て替え・大規模な改築など、形状や効用を大きく変える変更 | 共有者全員の同意(民法251条) |
| 期間が短く更新のない貸し出し(建物は3年以内の定期借家(更新のない借家契約)など) | 持分(各自の所有割合)の価格の過半数(民法252条1項・4項)。更新のあるふつうの借家契約は、原則として全員の同意(法務省資料) |
| 小さな補修など、現状を維持する保存行為 | 各共有者が単独でできる(民法252条5項) |
| 共有物全体の売却 | 共有者全員の同意が必要(法務省資料) |
過半数で決められる貸し出しは、建物なら期間3年以内で、更新がなく期間内に終わる契約(定期借家など)に限られます。更新のあるふつうの借家契約は、原則として共有者全員の同意が必要とされています。また、共有者どうしで決めて住んでいる人に特別な影響が出るときは、その人の承諾が必要です。

兄弟のうち1人が反対すると、建て替えも売却も進まないということですか?

建て替えのような変更は、1人でも同意しないと進めにくくなります。話し合いがつかないときは、裁判所に請求する方法があります。遺産分割の前なら家庭裁判所に遺産分割を、共有で分けた後なら共有物の分割を請求します(民法907条・258条)。ただ、裁判になると時間も気持ちの負担もかかります。
注意
共有のまま次の世代に相続されると、共有者がさらに増えます。連絡が取りにくい人が出ると、同意をそろえること自体が難しくなる場合があります。
2023年4月から変わった、遺産分割の10年のルール
具体的相続分と法定相続分
遺産分割では、生前贈与など(特別受益)や、財産の維持・増加につながる介護などの特別な貢献(寄与分)を考えて割合を調整することがあります。これを反映した割合を「具体的相続分」といい、民法どおりの割合を「法定相続分」といいます。
相続開始から10年を過ぎたら
2023年4月1日に施行された改正民法(904条の3)で、ルールが変わりました。相続開始(亡くなったとき)から10年を過ぎた後の遺産分割は、原則として法定相続分で分けます。法定相続分は民法が定める割合で、遺言で割合が指定されていれば指定相続分で分けます。10年を過ぎる前に家庭裁判所へ遺産分割を請求していた場合などは、例外として具体的相続分で分けます。

じゃあ、亡くなってから10年たつと、介護の貢献や生前贈与の話は主張できなくなるんですか?

原則はそうなります。ただし法務省の資料では、相続人全員が合意すれば、具体的相続分で分けることも可能とされています。2023年4月1日より前に始まった相続は、家庭裁判所への遺産分割の請求に、少なくとも2028年3月31日までの猶予があります(法務省資料)。
10年を過ぎても具体的相続分で分ける主な場合
- 10年を過ぎる前に、家庭裁判所へ遺産分割を請求している(民法904条の3)
- 10年の期間満了前6か月以内にやむを得ない事由があり、その事由が消えてから6か月以内に家庭裁判所へ請求している
- 相続人全員が、具体的相続分で分けることに合意している(法務省資料)
相続登記は3年以内。2024年4月より前に相続を知った不動産は2027年3月31日まで
相続登記とは、不動産の名義を亡くなった方から相続人へ変える登記です。法務省によると、相続したことを知った日から3年以内の申請が必要です。正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料(行政上の金銭の制裁)が科される可能性があります。2024年4月1日より前に相続したことを知った不動産も対象で、その期限は2027年3月31日です。
遺産分割がまとまらない場合は、相続人であることを申し出る「相続人申告登記」で、申請義務を簡易に果たせる仕組みがあります。その後に遺産分割がまとまったら、その日から3年以内に相続登記をする必要があります。また、不動産を売却するときは、別途、相続登記が必要とされています。手順は相続登記の期限と必要書類の記事で整理しています。
相続した実家を売る場合の税の特例は、空き家の3,000万円控除の記事をご覧ください(相続人が3人以上の場合は上限が異なります)。親御さんがご存命のうちの売却は、後見と信託の記事で整理しています。
まとめ

共有にするかどうかより、分け方を早めに話し合うことが大切なんですね。少し整理できました。
この記事のまとめ
- 遺産の分け方には、現物分割・換価分割・代償分割があり、共有のままにする方法もある
- 共有のままだと、建て替えや売却は全員の同意が要る。貸し出しも、期間が短く更新のないものを除き全員の同意が原則
- 2023年4月から、相続開始10年後の遺産分割は原則、法定相続分で行う
- 2024年4月1日より前に相続を知った不動産も、2027年3月31日までに相続登記が必要(相続人申告登記でも義務を果たせる)
相続や登記、税金の実際の判断は、法務局・税務署や、司法書士・税理士・弁護士などの専門家にご確認ください。
※本記事の内容は、民法(e-Gov法令検索)、法務省「不動産を相続した方へ」「具体的相続分による遺産分割の時的限界」「令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント(令和8年4月版)」「相続登記の申請義務化について」、国税庁タックスアンサーNo.3306、松江家庭裁判所「遺産分割ハンドブック」を参考にしています(2026年11月時点)。
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