相続した実家を売るとき、3,000万円控除は使えるのか

実家を相続して売るつもりです。「空き家の3,000万円控除」というものがあると聞きましたが、自分も使えるのでしょうか。

使えるかどうかは、建物の建築時期や売り方、売る時期など、いくつかの要件で決まります。期限のある特例でもあるので、先に全体像を確認しておくと安心です。
この記事では、「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」の主な要件と適用期限を、国税庁の案内をもとに整理します。2026年10月時点の内容です。なお、被相続人(亡くなった方)という言葉が出てきますが、ここでは実家に住んでいた亡くなった親を指します。
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売却について相談するマイホームの3,000万円控除とは別の制度です
「3,000万円控除」と呼ばれる特例は2種類あり、名前が似ていて混同しやすいので注意が必要です。ひとつは自分が住んでいた家を売るときの「居住用財産の3,000万円特別控除」。もうひとつが、今回の「被相続人の居住用財産(空き家)の特例」です。

親が住んでいた家なのに、普通のマイホームの控除は使えないのですか。

マイホームの控除は、売る本人が住んでいた家が対象です。親が住んでいた実家を相続しただけでは、原則として対象になりません。そこで用意されているのが、相続した空き家向けの今回の特例です。
費用や税金の全体像は家を売るときの費用と税金はいくら?手元に残るお金を売却前に確認しようで整理しています。この記事は、相続した実家の特例だけに絞って見ていきます。
特例を使うための主な要件
この特例を使うと、譲渡所得(売って得た利益)から上限3,000万円を差し引けます。ただし、令和6年(2024年)1月1日以後の譲渡(売却)では、この家屋と敷地を相続で取得した相続人が3人以上の場合、1人あたり上限2,000万円です。譲渡の期間は、平成28年4月1日から令和9年(2027年)12月31日までと定められています。
建物の条件
売る人は、亡くなった方から家屋と敷地の両方を相続(遺贈=遺言による贈与を含む)で取得した相続人であることが前提です。また、同じ方から相続した家屋・敷地でこの特例を受けられるのは、相続人1人につき1回だけです。
対象になるのは、次の3つをすべて満たす「被相続人居住用家屋」です。
- 昭和56年(1981年)5月31日以前に建築された
- 区分所有建物(分譲マンションなど)の登記がされていない
- 相続の開始の直前に、被相続人以外に住んでいた人がいない
被相続人が要介護認定などを受けて老人ホーム等に入所していた場合は、一定の要件を満たせば、入所前に住んでいた家が対象になります。具体的な条件は国税庁のNo.3307に載っています。
売り方の条件
売り方は大きく3つのパターンがあり、いずれかに当てはまる必要があります。どの場合も、相続の時から売るときまで、事業・貸付け・居住に使っていないことが前提です。
| 売り方 | 主な条件 |
|---|---|
| 家を売る(土地付き) | 売るときに耐震基準(地震に対する安全性の基準)を満たしている |
| 家を取り壊して土地を売る | 取り壊したあと、売るまで建物などの敷地として使わない |
| 売ったあとに耐震改修か取り壊しをする(2024年1月1日以後の譲渡) | 売った翌年の2月15日までに行う |
期間・金額の条件
- 相続の開始から3年を経過する日を含む年の12月31日までに売る
- 売却代金が1億円以下(分けて売っても合算して判定)
- 親子や夫婦など、特別の関係がある人には売らない(範囲はこの後の「売却先」で説明します)
たとえば相続開始が2025年5月なら、3年を経過する日(2028年5月)を含む年の12月31日、つまり2028年12月31日が特例上の売却期限です。ただし制度自体の期限が2027年12月31日までなので、この例では2027年12月31日までに売る必要があります(2026年10月時点)。
よくあるつまずきポイント

要件は分かりましたが、実際にはどこで引っかかりやすいのでしょうか。

建物の条件、取り壊しや耐震の手順、売却先の3点が多いです。順番に見ていきましょう。
- 区分所有建物は対象外:区分所有建物として登記されている分譲マンションの一室などは、この特例を使えません。
- 建築時期:昭和56年5月31日以前の建物でなければなりません。登記簿などで確認できます。
- 取り壊しのタイミング:取り壊したあと売るまでの間に、土地を貸駐車場にするなど事業・貸付け・居住に使うと、対象外になります。建物や構築物(塀や門など)の敷地として使った場合も同じです。
- 耐震基準:家を残して売る場合は、耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書が必要です。調査・評価は、売った日前2年以内に終わっているものに限ります。売ったあとに耐震改修する場合は、同じ証明書等で、工事完了の日から確定申告書の提出日までに調査・評価が終わったものが必要です。売ったあとに取り壊す場合は、取り壊しを示す登記事項証明書などが必要です。
- 売却先:親子や夫婦、生計を一にする親族、売ったあとに同居する親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人など、「特別の関係がある人」への売却は対象外です。
- 1億円の判定:一体として使っていた建物や土地のうち、自分や他の相続人が売った分も合わせて判定します。合計が後から1億円を超えたときは、修正申告(申告内容の訂正)が必要です。判定の期間は国税庁の案内でご確認ください。
相続した家を売るには、名義を変える相続登記も必要です。期限や手順は2027年3月末が期限の相続登記、親名義の実家は何から始める?をご覧ください。
相続した家を空き家のまま持ち続ける場合の固定資産税については、実家を空き家のまま置くと固定資産税は上がる?管理不全空家と勧告の仕組みで解説しています。
手続きの流れと、使うための確認先
この特例は自動では適用されません。売った年の分の確定申告(原則、翌年2月16日から3月15日まで)をする必要があります。
- 家のある市区町村に、「被相続人居住用家屋等確認書」の交付を申請する
- 売買契約書や、耐震基準の書類(家のまま売る場合)などをそろえる
- 税務署に確定申告をする(譲渡所得の内訳書、登記事項証明書なども添付)
同じ家について、「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」(いわゆる相続税の取得費加算)や収用等の場合の特別控除など、ほかの特例とは重ねて使えません。どちらが有利かは状況で変わるため、事前に税理士へ確認すると安心です。

思ったより条件が細かいですが、整理できて少し安心しました。

まずは建築年と建物の種類、相続の時期の3つを確認してみてください。アソシオは、相続や税金が関わる売却のご相談では、司法書士・税理士などの専門家と連携して対応しています。実家の状況に合わせた売却は、売却のご相談ページや家じまいのご相談ページからお問い合わせください。
まとめ
この記事のまとめ
- マイホームの3,000万円控除とは別に、相続した空き家向けの特例がある
- 1981年5月31日以前の建築で、区分所有建物ではないことなどが条件
- 相続開始から3年を経過する日を含む年の12月31日まで、かつ2027年12月31日までに売る(2026年10月時点)
- 売却代金は1億円以下。2024年以後の譲渡で家屋と敷地を相続した人が3人以上なら1人あたり上限2,000万円
- 確定申告が必要で、市区町村の確認書も要る
実際の判断は、税務署・税理士・司法書士・弁護士などにご確認ください。
※本記事の内容は、国税庁タックスアンサーNo.3306・No.3307・No.3302・No.3267・No.2020、租税特別措置法第35条(e-Gov法令検索)を参考にしています(2026年10月時点)。
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